僕はお酒が大好きだ。

独身の頃はスコッチにはまり、いくらお金をつぎ込んだことか。

スコッチに関しては、評論本や生産地、生産方法など、細かく勉強し

より美味しいお酒が飲めるように努力した。

札幌のバーを何件も渡り歩いた。

ただ、品揃えの多いバーというのは少なく

僕の思い描くバーを見つけるのは、たくさんのお金と時間がかかった。

当時はインターネットが出始めで、ISDNも無かった。足と雑誌で見つかる時代だった。

色々なお酒を飲みたいので、ボトル一本買うよりも

バーに行けば、量は飲めないが同じ金額で、違うスコッチが何杯も飲めるのだ。

そして、美味しい!と思うお酒が見つかれば

酒屋さんに行き、取り寄せてもらう。

スコッチの後は、ラムやジン、テキーラ等、数々のお酒にはまった。

しかし、結婚、出産と共にそんな暮らしは消え

今では、安い焼酎を飲んでいる。

それでも、帰宅後に家族の顔を見ながら飲む焼酎は悪くない。

暗いバーで飲むお酒も美味しかったが、違う味わいがある。

だが、最近、お酒があまり美味しく感じない。

「あ〜、この一杯のために生きてるな!」ってのが無い。

そして、大好きなスコッチも美味しく感じない。

どこか悪いのかな?とも思ったが、健康診断では問題なかった。

これは困った。

大好きなお酒が美味しく感じない。

アル中になろうとは思わないが、ビール一本で終わってしまう晩酌は切ない。

考えるも、原因が分からない。

そんな中、友人が店に遊びに来た。

「こいつに相談してもな〜」てのはあったのだが、相談してみた。

「最近さ、酒飲んでも美味しく感じないんだ。体は問題ないんだけどさ」

「へ〜、珍しいじゃん。もう年なんじゃね。あと、寒いからビールはイマイチだよな」

僕はピーンときた。

体が求めていないのだ。

今までで、一番美味しかったお酒は何か?

たぶん、セールスマン時代にエアコンの無い車に乗り

真夏の町を汗だくで走り回った後、仲間と夜に居酒屋で飲んだビールだろう。

大ジョッキをイッキに飲み干す。その爽快感と充実感。

お酒以外であれば、中学の部活の後に飲んだ7UPだろう。いや、マウンテンデューかな?(笑)

今は、神経は使うが肉体はほとんど使わない。

よし、突破口は見つかった。

ただ、時間的にジムとかにも行けないので

僕は自転車通勤をする事にした。

その足で、自転車屋さんに入り自転車を物色。

ロードタイプとか、早そうな自転車が沢山あるが

早い自転車は要らない。運動になる疲れる自転車が欲しいのだ。

店員さんに訳を話すと、「それならマウンテンバイクだね」と

8万円のマウンテンバイクを勧められた。

街中では無駄に太いタイヤ。これは良い感じ!

でも、8万は佐藤家の大蔵省が許してくれない。

「もう少し、手ごろなのないですかね?」店員さんに聞いてみる。

「いや、良いの買っといたほうがいいよ。後々色々いじれるからね」

「え!いじれるの!パーツとか交換できるんだ」

車をいじる感覚で、自転車もいじれるらしい。交換パーツも沢山出ている。

それにしても、ホームセンター以外で自転車を見たことが無かった僕には新鮮な空間だ。

50万とかする自転車が平気で陳列されている。

店員さんの話を聞きながら、「ロードタイプで北海道を回るのもいいな〜」と思う。

マニアックな自転車の世界に引きずり込まれそうになりながらも、本来の目的に戻る。

「いや、とりあえず安いの買って様子をみます」

「安いのだとね、悪路走ったときにブレーキとか利かないよ」

「いや、通勤なんでアスファルトの上しか走りません」

「そうなの、でもね山走るの気持ちいいよ!どろどろになりながら走るのがマウンテンバイクなんだ」

僕の話が通じていないのか、今月売り上げが悪いのか。

話す事、一時間。

何とか安いマウンテンバイクを売ってもらいました。

「一ヶ月ぐらいすると、ブレーキの調整が必要になるから来店してくださいね」

そう言われたのですが、高いの買わされそうでまだ行ってません(笑)

そして、ハッと重要事項に気が付く。

「あ!嫁さんに言ってない!」

これは怒られる。間違いなく怒られる。

作戦を考える。

やはり経済効果とECOで行くしかない。そう決めて帰宅する。

「いや〜ガソリン上がってひどいな!このままだと200円いっちゃよ!」

「そうなの?ガソリン上がると物価も上がって大変よね」

「けどさ、限りある資源だから無駄に使ってはいけないと思うんだ。

子供たちの未来もあるし、俺、自転車買ってきた。」

嫁さんの目つきが変わる。

「はぁ?いくらしたの?」

「wii買えるぐらい。」

またかコイツ。そういう目で僕を見る嫁。

しかし、10年も一緒に居れば言っても無駄と言うのは分かるらしい。

「まあ、いいわ。途中でやめないでね」と、あっさりと許してくれた。

通勤のガソリン代と自転車を比較してくれたのだろう。

調子にのった僕は、「なんかね、自転車屋さんは8万ぐらいのが良いって言ってたよ」と言って見た。

すると、小さい声で「殴りて〜」と嫁がつぶやく。

よし!ここが限界点!撤退!

その後は、家族でサイクリングへ行ったりと、自転車ライフを楽しんでいる。

家からシミ研までは、片道役6キロ。自転車で往復40分。

良い運動にはなるのだが、疲れてすぐに寝てしまう。

美味しいお酒への道のりは長い。

いつも通りの昼下がり、僕は仕事に励む。

染み抜きの音がうるさいが、携帯電話が鳴っているようだ。

電話を見ると、嫁さんからだった。

僕は、忙しい時や集中したいときは嫁さんからの電話には出ない。

出なくても、後で話せるからだ。それを嫁もわかっている。

しかし、今回はしつこい。

留守電になっても、またかけ直してくる。

「ん??これは何かあったかな?」

そう思い電話に出る。

「もしもし」

すると嫁は、物凄く動揺した声で

「どうしよう・・・。キキ死んでるんだけど・・・。」

キキとは、今年の初めに我が家にやってきたハムスター。

キーキーと鳴いた事から、長女がキキと命名した。

ペットは全く飼う気が無かったのだが、

子供たちの欲しい欲しいビームにやられ、結局、飼ってしまった。

条件は、自分たちで面倒を見ること。

もちろん、「任せて任せず」で、最終的には僕らがチェックする。

子供たちはとてもキキをかわいがり、みんなに「私たちの子供なの!」

と自慢していた。

そんなキキが、餌箱の前で死んでいるらしい。

今朝まで元気に動いていたし、エサも食べていた。

ただ、今考えると数日前からカラカラと回る道具では遊んでいなかった。

もっと早く気が付いていれば・・・。後悔である。

そして、その事実は子供たちにまだ知らせていないという。

こりゃ困った。

前回ダイヤの8とは違い、また買ってきて入れておく訳にはいかない。

嫁は、僕が仕事から帰ってきてから、子供たちに説明して欲しいらしい。

しかし、僕としてはそれは変な事で、

嫁に、子供たちにショックを与えないように話すように言った。

後のフォローは、僕がする事も伝えた。

その後は本当に大変だったらしい。

長女、次女ともに声にならないほど泣き、

話も出来なかったという。

その事実をメールで読んだ僕は、帰宅の前に「死」というものについて

どのように説明すれば良いか悩んだ。

今までも、じいちゃんばあちゃんの死は経験しているが

本当の身近なものの「死」というのは、初めての経験だろう。

僕が家に帰ると、キキの祭壇が作られており

花とエサ、水などが供えられていた。

本当に嫁さんは、こういう所が優れている。僕には出来ないと思う。

子供たちは、まだ泣いており目が腫れている。

「キキ死んじゃったね」

子供たちに話しかける。

「ちゃんと面倒見なかったから死んだの?」

次女が僕に問いかける。

「たぶん、病気だと思うけど、キキが天国にいけるようにお願いしようね」

そう言った時には、僕も泣いていた。

僕は、あの世を信じていない人間だが、この時ばかりは

「キキ、今までありがとう。天国へ行っておくれ」そう願った。

そして、子供たちと話した。

5歳と3歳の子供には、まだ「死」という話題は重たい。

しかし、目の前で起きてしまった事は受け入れなければならない。

うまく受け入れられるように、噛み砕いて話す。

それが僕の役割だ。

子供たちとかなり話した。うまく説明出来ない事もあったし、

天国等の、僕も良く判らない事、色々な話をした。

僕が話の中で一番気をつけたかった事は、死の恐怖を与えない事。

子供の心には、今回の事は、物凄くショックだったはず。

それは、「僕ら大人には判らないのかも知れない」と思っている。

純粋さが、僕とは違うはずだから。

死を受け入れるのと、死を恐怖するのは、僕の中では違うのだ。

子供たちが少し落ち着いたので、今度はお墓のことを話す。

いつまでも、このままにはしておけないので、キキを埋めなければならない。

ここでも、説明する。

合っているのか、間違っているのか、僕にもよく判らないが

一緒に話し、一緒に考えた。

「明日、キキを埋めよう」という話になったが、スコップが無いので

僕と長女は、スーパーへ買いに行った。

スコップを選ぶのだが、長女がまた泣いている。

「キキは女の子だから、赤色がいいよね」そういって、僕にスコップを渡す。

僕も泣く。スコップを持って泣いている親子。とても変な風景だろう。

翌朝、早起きしてキキを埋めに行った。

最後に抱っこしてあげようと、長女、次女ともにキキを抱く。

冷たく硬くなったキキ。

それを手のひらにのせ、泣いている子供を見て本当に悲しくなった。

そして、キキを埋め、お墓を作った。

その後は、子供たちの精神状態も安定している。

今回の事も、とても考えさせられた。

テーマが「死」という、とてつもなく重いものだったが

絶対に避けては通れない道である。

いずれは、僕たちも死んでいく訳で、

それを乗り越える強さも、成長の過程で学んで欲しいと、今回は沢山の事を話した。

時期は、早かったかも知れないけれども。

僕はあまり利口ではないので、「こういう話は何歳になってから」なんてのは考えない。

目の前に起きた事が、メッセージであり

その時に乗り越えるべき課題という考え。

偶然では無く、すべては必然。

僕は、まだまだ未熟だ。

家庭株式会社の平社員。

部長クラスになれば、説明も説得もうまくなるのだろうけれど。。。

さよならキキ

長女、次女の子供として我が家にやってきたけど

長生きさせてやれなくて、ごめんなさい。

ただ、キキのおかげで

動物と遊ぶ楽しさや、育てる大変さ、

そして、死というものを子供たちは学びました。

我が家に来てくれて、本当にありがとう。

そして、さようなら。

数日前の出来事。

夕食が終わり、僕はいつもどおり焼酎を飲んでいた。

ふと横を見ると長女が泣いている。

ビックリした僕は、「どうした?どこか痛いの?」と聞いた。

すると長女は、「トランプが何枚か無くなったの」そう答えた。
実は、今回の春休みに僕の実家に行っていた長女と次女は

ばあちゃんの影響でトランプが出来るようになっていた。

我が家にはトランプが無かったので、長女は

毎日のように「トランプ買って〜!」とおねだり。

別にトランプぐらい買っても良かったのだが、毎日毎日、トランプをやらされる

と思うと、中々買えなかった(笑)
一週間ぐらいすれば、「買って!」と言わなくなるだろうと思っていたが

思いのほかシツコク粘る。

最後に根負けしたのは僕。

安いトランプを買い、毎日毎日、トランプの日々だった。。。

トランプを買った時、約束をした。

必ず片付けをしなさいと。

なので、トランプが無くなった長女には大事件。

泣きながらトランプを探す。
知らんぷりも出来ないので、僕も探す。嫁も探す。次女は探すフリ。

5枚無かったのだが、4枚は見つかった。

ベットの下にあったり、おもちゃの中にあったり。

しかし、最後のダイヤの8がどうしても見つからない。

家族総出で2時間探すも、見つからない。

結局、夜も11時になり、長女次女共に幼稚園もあるのでその日は寝ることに。
僕は考えた。

新しいトランプを買っても良いが、無くなったら新しいのを買ってくれると

子供が思うことに、物凄く不信感があった。

新しいトランプを買い与えるのは簡単だが、それでは子供が成長しないように思った。

物を大切にする子供になって欲しい。

しかし、僕は結局同じトランプを買った。

そして、ダイヤの8だけを取り出した。

家に帰ると、「ダイヤの8あったよ!」と子供たちに渡した。

残りのトランプは無駄になるが、丸々買い与えるよりも良いと思ったのだ。

嘘ではあるが、新しいトランプを買うよりは良いと思った。

子供たちは「良かったね」と一段落だが

不振がっているのは嫁である。

 

「昨日あんなに探したのに、家に帰ってきたとたんに見つけられるはずが無い」と思ったらしい。

そりゃそうである。正論。
僕に向かって嫁はこっそりと

「トランプどこに隠してたのさ?」と聞いた。
「はぁ?隠すってなによ!」

カチンときたが、まあ、かなり不自然なので当然と言えば当然。

僕は嫁に事情を説明した。

もしかしたら、トランプが無くなってトランプが出来ないといのも

子供にとっては良いのかも知れない。

物を大切にし、片付けをきちんとする子供になるのかも知れないし。

嫁に相談しないで、トランプを買ってきた僕はどうなのか。。。

家族の問題なので、嫁に相談をしなかった僕も悪かった。
こういうのって、本当に難しい。
物を買い与えるのは簡単だが、良い方向に行くのかは判らない。

もう少し大きくなれば、ゲームを持っていないからという理由で。

仲間はずれになったりするかも知れない。

服にしたって、靴にしてもそうだ。

子供が「欲しい」と言ったらどうするのか?
「必要であれば買う」

 

それはそうなのだが、そもそも「必要」とは何なのか?

隣の子が持っているから必要?

子供が欲しがっているから必要?

親が身につけさせたいから必要?
難しい。

親の見栄の為に子供を使おうとは思わないが、

あまりにもみすぼらしい格好はさせられない。
与えるのは簡単だが、それで子供にどのような影響が出るか。

考えていかなけばなりませんね。

 

 

 

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