先日、一本の電話が鳴った。
「ボンドのシミなんですが落ちますか?クリーニングに出したんですが駄目でした。」と男性の声。
僕は、「素材は何でしょうか?」
色々聞いた所、素材は綿のようだ。
札幌のお客様だったので「問題ないと思いますね。では、営業を伺わせますね。」と電話を切った。
翌日、営業がボンドの付いたコートを持ってきた。
僕は、先入観に見事にハマッた。
染み抜き職人として、問題なのはお客様の言った事を100%鵜呑みにする事だ。
こういう事は良くあって、「これ、コーヒーのシミなんだけど」と言われて、実は血液だったり。
お客様の事を信用するなとか、そういう話では無い。
お客様も間違う事もあるし、勘違いもする。こう考えている。
1時間、ボンドと格闘した。
ボンド系は通常、油性処理だ。溶解力の強い薬品を使用し、除去していく。
取れない・・・。ボンドが取れない・・・。どうして取れない?・・・・。
ボンドや瞬間接着剤は、取れない事はほとんど無い。
しかも、今回のように全く取れない事はまず無い。
僕は、「このボンドは取れない。諦めよう。」そう思った。悔しさ20000%だった。
諦めたその時、スソに同じ色だが薄いシミを見つけた。
「お金は貰えないが、この染みは抜いておこう。」
漂白は出来る生地なので、漂白処理をして落とした。
この染みは水溶性のシミだった。しかも果物のシミのようだ。
「もしや・・・」
そでのシミを、水溶性処理すると薄くなった。
ボンドは、水溶性処理は基本的にしない。僕はボンドだと100%思い、水溶性処理、漂白はしなかった。
そうなのだ、このシミは果物のシミだ。
汁が付いたのでは無く、潰れて実ごと付いたのだと想像される。
そして、乾燥しシミとなった。
さらに、ドライクリーニングされプレスされカチカチに固まったのだろう。
僕もまだまだ未熟だ。修行が足りん!

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